お刺身雑記

漁師町に生まれて

兵庫県の香美町という漁業が盛んな街で生まれ、鳥取県→岡山県→東京→鳥取県と移り住み、再び岡山に住み始めて18年目となります。ふるさと兵庫県での食卓には、ほぼ毎日というくらい魚がありました。蟹の町としても有名で、シーズン中には蟹が食卓に上がることもしばしばありました。普段は、いかの刺身、鯖の塩焼き、カレイの一夜干しなど。これらの魚は本当によく、食卓に上がっていたと思います。父親が小型ボートで漁師のまねごととのような魚釣りで釣り上げてくるガシラ(カサゴ)と呼ばれる魚も美味しい記憶にあります。とにかく魚を食することが多く、当時は飽き飽きという感じもありました。それが、親元を離れて学生時代の寮ぐらし、後に一人暮らしを始めた時、飽き飽きしたはずの魚料理が、無性に恋しくなりました。1週間のうちに必ず食卓に上がったていた刺身が食べれない。。普通にあるものがなくなることが、こんなに寂しいものなのかと思いました。故郷の魚とは違えど、移り住んだ鳥取県も魚の美味しいところでした。美味しい魚が食べたい一心で、お酒が飲める年齢になったころには、魚の美味しい居酒屋へよく行きました。その後移り住んだ岡山では瀬戸内海の魚を食することができました。こちらも大変美味しいです。また、日本海では外魚とされていた魚がスーパーに陳列されていたり、魚文化の違いにも驚かせられました。東京には2年も満たない期間しか住んでいませんでした。お金があれば、最高級のお店がたくさんあるのでしょうが、そのようなお金はなく、、スーパーの刺身で我慢せざるを得ませんでした。こちらのスーパーのお刺身は、ふるさと兵庫県や、鳥取・岡山の魚たちとは大きく違い、寂しい気持ちになりました。再び、岡山に移り住み、奥さんとの二人暮らしが始まった当初もやはり、魚にはこだわりたいと思いました。岡山市内のいろんなスーパーの鮮魚コーナーにを廻りました。魚といえば、新鮮が一番だろう。魚の姿そのままで売っている状態が新鮮だろう。ということで、店頭に本日水揚げ!刺身にできます!といった魚を買うようにしていました。昔から、魚を捌くことに憧れて、ちょいちょい練習していたので、決して上手とはいえないが、魚1本購入して、捌いてお刺身にするといった事を含めて、刺身を楽しんでいました。もちろん、お店の人に捌いてもらう事もありました。そんな、魚の買い方、食べ方をしていましたが、なんだか、家で食べる刺身に満足感を得れない。美味しい居酒屋で食べる刺身と何が違うのか。

 

 

美味しいお刺身とは

そんな、疑問を抱きつつ、週に何度かは刺身を食していたある日。奥さんが、隣の奥さんから美味しい刺身・美味しい魚のお店情報を仕入れてきました。住んでいるマンションからすぐ近くの寺坂商店というお店。昼は魚屋、夜は居酒屋というスタイルのお店。早速、奥さんと足を運んでみました。店頭を見ると、業務用の冷蔵庫の中に半身に降ろされた魚が白いプラスチックトレーにラップされた状態で売られていました。普通のスーパーよりも期待感を煽るようなイメージはなく「新鮮で美味しい魚=姿で豪快に陳列」のイメージがある僕には少し物足りない印象です。本当に新鮮なのか、美味しいのか。そもそも、美味しい魚ってなんだろうと考えてしまいます。半信半疑でヒラメの刺身を購入してみました。帰っての晩御飯。早速、晩酌のおともに。。すると、これが、本当に美味しい。おいしい居酒屋の刺身。考えてみると夜は居酒屋の魚屋産なので当たり前なのですが。同じヒラメの刺身でも、明らかに違います。しっかりと甘みがあり、食感もいい、縁側もわざとらしい油っぽさがなく、ちゃんと縁側。臭みは全く感じない。少々、大袈裟ではありますが、ほかの魚屋さんではヒラメとコチなどの白身の刺身で、味の区別がつきにくい、つかないといった事があります。ちゃんとヒラメで美味しい。その美味しさの秘密は、、わかりません。お店の人にもあえて訪ねていません。おそらくですが、次のような事が理由だと考えます。・仕入れる魚への目利き、鮮度・仕入れる魚が撮れた時に適切に締めてあり、最適な保存である・捌き方、処理が丁寧ありきたりな理由、どこのお店でもありそうな理由と思われるかもしれませんが、これらのことに特に気遣いがあると考えられます。もしかすると、ただただ新鮮ということではなく、ある程度時間をおき、少し寝かせてから刺身用として販売している種類もあるかもしれません。陳列されている魚も、だいたいいつも種類が決まっていて、無闇に珍しい魚があることは滅多にないのも特徴です。おそらくは、美味しさのポイントの探求を重ねた結果の魚のラインナップなのでしょう。魚、刺身の美味しさは新鮮さだけではない気がします。